近代日朝関係史(特別講義)
山本 興正 
単位: 2 開講期: 1期 開講年度: 2024
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【授業表題】
近代日朝関係史
【授業の形態・方法・内容】
【授業の形態・方法】
この講義は講義形式でおこなう。授業の進め方は初回の授業で説明する。
授業の途中と最後に「ふりかえり」として、前半と後半の講義内容について自らが考えたことをアウトプットする時間を取る。そのなかで重要な指摘・意見については、次週の講義の際に講師の見解を述べフィードバックする。

【授業の内容】
本講義では、今日の日本と南北朝鮮(大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国)の関係を考えるための歴史的知識を獲得することを目的とする。今日、私たちは、多くの書店で南北朝鮮に対する敵視・蔑視の思考にとらわれた書籍ばかりが平積みにされているのを目にする。なぜそうなのか。その大きな要因の一つとして、近代日本と朝鮮の関係史についての没理解・曲解があげられる。現代日本における朝鮮敵視・蔑視観は、今日の新たな状況によって形成されているという側面をもつ一方、近代以降の日本政府がとってきた政策とそれと関連して形成された日本人の朝鮮観という、より堅固な側面を継承している。日本人の朝鮮観は日本政府の朝鮮植民地支配政策とどのような関係にあるのか、統治者の朝鮮観と民衆の朝鮮観とはどのような点で同質もしくは異質であるのか、こうして点についての歴史的事実に基づいた理解を深めることによって、今日の差別・レイシズムの問題を考えるための知的基盤を獲得することが本講義の目的である。この作業は、今日の複雑な状況のなかで、私たち一人ひとりが「他者」との関係のなかで自律した思考をもつことはいかにして可能であるかという、より広い問いへと向かわせる。本講義では、歴史的背景を丁寧に追いながら日本人の朝鮮観の形成過程をとらえること、さらには戦後日本において朝鮮をめぐる思想には現代にも通用する普遍的可能性はあったのかについて考えること、この2つの作業をおこなうことで、今日における日本人の朝鮮観を私たちがどのように克服していくことができるのかを考えたい。
【到達目標】
以下の諸点についての認識を深めることを目標とする。
1.近代以前の日本・朝鮮の関係は近代においてどのように変化したのか。
2.朝鮮に対する植民地支配の本質はどのようなものだったのか。
3.日本の朝鮮植民地支配の過程で、どのように朝鮮蔑視の思想が形成されたか。
4.日本民衆の朝鮮蔑視観は朝鮮侵略戦争とどのような関係があるのか。
5.為政者の朝鮮観と民衆の朝鮮観の関係のダイナミクスはどのようなものか。
6.朝鮮植民地支配と解放後の朝鮮分断状況に対して朝鮮民衆はどのように向き合ったのか。
みられるように、本講義の視座には「民衆」が据えられている。上記の点を深く考察しながら、自分自身の中に一つの軸となる朝鮮観を確立することを目指す。とくに朝鮮史における朝鮮民衆の肯定的な面を理解することで、今日の思想状況に対して自律的な自分自身の朝鮮観を確立する。
【この授業科目とディプロマポリシーに明示された学修成果との関連】
(全学 DP2)幅広い教養と外国語に関する基本的な知識・能力
(全学 DP3)現代社会における諸問題あるいはさまざまな学術研究分野における諸問題を発見・分析・解決する実践的な知識・能力
(全学 DP4)上記の知識・能力に裏付けられた総合的な判断力と行動力
【事前・事後学習】
事前・事後学習は1週間あたり4時間の授業外学修が必要である。学修にあたっては、下記「参考文献」にあげている関連文献を読んでおくこと。それ以外の参考文献に関しては授業内で適宜紹介する。
【授業計画】
第1回 ガイダンス(授業の進め方、朝鮮史をみる際の基本的視点について、用語の説明など)
第2回 前近代の日朝関係
第3回 明治維新と朝鮮
第4回 自由民権運動・アジア主義の思想と朝鮮
第5回 日清・日露戦争と朝鮮
第6回 「韓国併合」はどのようになされたか
第7回 なぜ朝鮮人が日本にいるのか:在日朝鮮人社会の形成
第8回 三・一独立運動と朝鮮独立運動の展開
第9回 関東大震災時の朝鮮人虐殺
第10回 皇民化政策と朝鮮民衆
第11回 日本敗戦と朝鮮解放
第12回 戦後日本における新たな朝鮮観の模索
第13回 戦後日本の社会運動①:韓国民主化運動との「連帯」
第14回 戦後日本の社会運動②:在日朝鮮人との「共生」
第15回 まとめ
第16回
第17回
第18回
第19回
第20回
第21回
第22回
第23回
第24回
第25回
第26回
第27回
第28回
第29回
第30回
【評価方法】
平常点60%(レスポンスシートの内容)、学期末レポート40%
 *レスポンスシートは基本的に1度の講義につき2度記入の時間を取る。レスポンスシートの提出をもって出席とする。レスポンスシートの内容がほとんど無に近い場合、欠席とみなすことがある。
【教科書】
なし
【参考文献】
梶村秀樹『梶村秀樹著作集』第1-6巻、明石書店、1992-1993年
梶村秀樹『排外主義克服のための朝鮮史』平凡社、2014年
在日韓人歴史資料館編『朝鮮近現代史から日本を問う』在日韓人歴史資料館、2015年
中塚明『日本人の明治観をただす』高文研、2019年
旗田巍『日本人の朝鮮観』勁草書房、1969年
旗田議『朝鮮と日本人』勁草書房、1983年
山田昭次『植民地支配・戦争・戦後の責任:朝鮮・中国への視点の模索』創史社、2005年
【特記事項】
授業中に会話しているばあいは、授業に関連する内容のものとみなし、その内容を講義参加者全員に開陳することを要求することがある。
【開講期・曜日時限・ペア・教員名】
開講期・曜日時限が下記の表で示されていますが、履修できる曜日時限は学年・学科等により異なる場合があります。自分の「履修登録」画面に表示される曜日時限のみ履修登録することができます。

開講期 曜日時限 ペア 教員名
1期 木5 山本 興正