教養入門(水1)
榎 基宏、野田 淳子、山辺 弦 
単位: 2 開講期: 1期 開講年度: 2022
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【授業表題】
批判的に考える
【授業の形態・方法・内容】
・形態・方法
 この教養入門は、3名の講師が交代で担当する、講義形式で行う授業である。

対面授業で実施する予定であるが、遠隔授業となった場合は、manabaを利用したA型(配信された講義資料などに基づいて学習するもの)で実施する。なお、遠隔授業実施時に配信される講義資料は、文書だけでなく、授業内容を収録した動画や音声メッセージなどが含まれる場合もある。
 
・内容 
「教養」は大学での学習の基礎であるだけでなく、自律的で自由な人格を形成するための土台でもある。この講義では、いま求められている「教養」の意味について、各教員の問題関心や専門領域を切り口として論じる。受講者は、講義の内容を通じて、今後、大学や社会との接点で自分なりに考えるきっかけ作りと訓練にあててほしい。  

 担当教員とそれぞれの講義テーマは、以下を予定している。
*( )内は当該教員が本学で担当する主な授業名、もしくは主な専門領域を表す。

1.榎 基宏(自然の構造、物理学・天文学):
 寺田寅彦のエッセイを読み、自然災害を通して見た人間社会の現象について考えます。寺田は物理学者ですが、文学や芸術に造詣が深く、一般向けに分かりやすく科学を解説したエッセイを多く書き残しました。この講義では、地震や台風といった自然現象が引き起こす災害をテーマとした寺田のエッセイをいくつか読んでいきます。その上で、寺田が指摘する「災害について一般にイメージされる『常識』と、現実の災害で起こったこととの違い」に注目し、「自然界の現象」である自然災害を通して見た、「人間界の現象」について考えていきます。

2.野田 淳子(心理学):
『待機児童ゼロ』や『早期教育』など、世の中には耳触りの良いフレーズが溢れています。しかし、その実現が子どもの心や家族関係の育ちにどう関わるのかといった問題は見逃されがちです。本講義では、そうした社会的なトピックスの背景にある人の心や行動、その変化のしくみを客観的に検討する心理学の方法について学び、心が育つ環境はどうあるべきかという問題にアプローチします。誰もが有する「主観的常識」から一歩引いた視点から「常識とは何か」を問うことによって、新たな視点との対話の可能性を探っていきたいと思います。

3.山辺 弦(外国文学、スペイン語):
「文学」とは何でしょうか。現実の世界が複雑で謎に満ちているように、私たちに与えられたもうひとつの世界である「ブンガク」もまたさまざまな謎に満ち、それらの謎を解くように私たちを誘います。そしてその呼びかけに学問として応えようとするのが、文学批評や文学研究と呼ばれる分野です。この授業では、「ブンガク」の発する問いとは何か、文学批評や文学研究は、どんなことをどのように語るのかといった点について、いくつか具体的例を挙げつつ考察します。受講生のみなさんにはそれを踏まえ、自ら主体となって、「ブンガク」って何なのか、どこが面白いのか、実際に役に立つものなのか、いかなる意味で教養と呼べるものなのか、といったシンプルかつ深い問いについて考えてもらいたいと思います。
【到達目標】
1.大学における専門課程の学習の土台を成す「教養」の基本的な考え方、活かし方とその重要性を理解する。
2.「教養」が現在の重要な社会的課題と密接に結びついていることを理解し、学問と社会のかかわりについて認識する機会とする。
【ディプロマポリシーとの関連】
この科目は、「教養」に関する「基本的な知識と能力」を身につけるための科目である(全学DP2)。
【事前・事後学習】
各担当教員が講義中に配布した資料については、次回までにその資料全体を各自でもう一度通読し、講義内容を自分なりに整理しておくことを最低限の復習課題とする。また次回講義用に配布した資料についても次回講義までに通読をして授業に臨むこと。

なお、「大学設置基準」上、この科目は「講義」科目にあたるので、授業時間外に行う事前事後学習に要する時間は4時間程度となる。
【授業計画】
第1回 ・3つのクラスに分かれるが、3クラス合同で授業を行うこともある。
・第1回は、3クラス合同でオリエンテーションを行う。
・第2回以降は、3つのクラスに分かれ、3名の教員が4回ずつ講義を行う。
・その間に、ゲスト講師の講演を3クラス合同で聞く。
・最終回(第15回)では、全体のまとめとして、3クラス合同で教場レポートを課す。

以下は、あるクラスの予定である。担当教員順はクラスにより異なる。
(クラスごとの詳細な授業日程については、第1回目のオリエンテーションで周知する)


オリエンテーション (3クラス合同)
第2回 榎担当1回目:「災害に対する人間の心理と行動」について考える
第3回 榎担当2回目:「事実を正しく認識すること」について考える
第4回 榎担当3回目:「デマを見破る科学的方法」について考える
第5回 榎担当4回目:「災害を防ぐにはどうしたらよいか」を考える
第6回 野田担当1回目:心理学における“実証科学”アプローチ
第7回 野田担当2回目:「早期教育」について考える
第8回 野田担当3回目:「経済格差と知的能力」について考える
第9回 野田担当4回目:「待機児童」問題について考える
第10回 ゲスト講師講演 (3クラス合同)
第11回 山辺担当1回目:「ブンガク」を考える -あるいは、いくつかの基本的な問いについて
第12回 山辺担当2回目:「ブンガク」を論じる(1) -どのように読むか?
第13回 山辺担当3回目:「ブンガク」を論じる(2) -何を読み解くか?
第14回 山辺担当4回目:「ブンガク」とともに考える -あるいは、文学と「教養」
第15回 まとめ・教場レポート (3クラス合同)
【評価方法】
1.平常点:3人の担当教員がそれぞれの担当授業においてリアクションペーパー、小テスト、レポート等を課し、その成績を25点満点で評価する。(25点×3)
2.ゲスト講師の授業のレポート等および、最終回に教場で行うまとめレポート(計25点)
1と2を合算して、100点満点で評価する。

*評価方法の詳細は、第1回目のオリエンテーションで周知する。また、提出された課題には、必要に応じて、適宜フィードバックを行う。
【教科書】
講義全体を通じた特定の教科書は指定しない。
【参考文献】
授業中に適宜指示する。
【特記事項】
授業中の私語、遅刻、途中退席など、講義の進行を妨害し、他の履修生の学習を妨げる行為については厳格に対処する。
【開講期・曜日時限・ペア・教員名】
開講期・曜日時限が下記の表で示されていますが、履修できる曜日時限は学年・学科等により異なる場合があります。自分の「履修登録」画面に表示される曜日時限のみ履修登録することができます。

開講期 曜日時限 ペア 教員名
1期 水1 野田 淳子
1期 水1 榎 基宏
1期 水1 山辺 弦