人権論b
寺中 誠 
単位: 2 開講期: 2期 開講年度: 2015
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【授業表題】
グローバル化する世界と人権
【授業の形態・方法・内容】
春学期に続き、現代社会の中で重要な概念として機能するにいたった人権をめぐる問題を、国際的かつグローバルな規模の現象として考えます。
近代国家は「国民国家」「民族国家」という概念の下に形成されました。この近代国家の基礎概念としての「国民」や「民族」がどのような発送の下に作り出されてきたのか。やはり近代が生み出した概念である「人権」はそれとどのような関係に立つのか。
いま、グローバル化の時代を迎えて、世界規模での戦争や武力紛争が生み出した国際刑事司法や難民保護の制度は、従来の国境管理を基本とした国家の枠を超えてきています。一方で、移民排斥に見られるような排除型社会の進展は、従来の民族国家概念を頑なに守ろうとしています。また、世界経済の大きな流れは、従来の国家を超える存在としての世界企業を生み出し、人びとの生活に直接の影響を及ぼしています。こうした人権を取り巻く現代的な状況を踏まえながら、現代社会のイメージを捉えなおしてみます。
春学期との連続性はありますが、それぞれ独立した講義として実施します。
【到達目標及びディプロマポリシーとの関連】
グローバル化した世界の中で民族国家や人権がどう捉えられるのかを理解する。
世界的な人権問題とされるものが、自分たちの身近な生活と結びついていることに気づく。
国際的な問題について、議論できるだけの素地を形作る。
【事前・事後学習】
講義受講者はノート作成を必須とする。
①事前に概説書等を参考にする。(参考文献に挙げた資料などを読んでみる)
②授業に参加し、自分専用のノートに必要事項を記録する。
③ノートの内容を確認しつつ、疑問点があれば質問する。
④授業中に示された参考図書等を調べて、ノートに反映させる。
【授業計画】
- 誰のための人権か?「権利基盤アプローチ」入門
- 「民族=国家」(ネーション・ステート)としての近代国家
- 植民地主義から世界大戦、大戦後の世界秩序へ
- 難民・入管政策と刑事司法/犯罪の国際化論
- 国際人権法システムの誕生とNGOの登場
- 国際刑事法の誕生と発展(1990年代の「民族紛争」と国際刑事法廷)
- 国際刑事法と国際犯罪の確立(国際刑事裁判所の成立)
- 人道に対する罪への対応(「慰安婦」問題などを例として)
- 裁きか和解か:真実和解委員会の試みから修復的正義へ
- 死刑廃止の国際基準化(国際的な人権基準はどう作られるか)
- グローバル化する企業社会と人権
【評価方法】
授業内容の理解と、独自の視点を持ち得ているかという点を合わせて評価する。
期末におこなう臨時試験での評価に加え、出席状況、学期中の感想文提出などを総合的に考慮して最終評価とする。
【教科書】
国際刑事裁判所に関して、
アムネスティ日本国際人権法チーム編「ぼくのお母さんを殺した大統領をつかまえて。 ― 人権を守る新しいしくみ・国際刑事裁判所」合同出版
他については、以下の参考文献等を参照
【参考文献】
ヴァカン「貧困という名の監獄」(新曜社)、阿部「抗う思想/平和を創る力」(不磨書房)、小坂井「民族という虚構」東京大学出版会、長谷部「憲法の理性」(東京大学出版会)、「入門国際刑事裁判所」(現代人文社)、「正義の再構築を求めて」(現代人文社)、ヘイナー「語りえぬ真実」(平凡社)、功刀・毛利編「国際NGOが世界を変える」(東信堂)、高橋「修復的司法の探求」(成文堂)、廣瀬「国際法社会学の理論」(東京大学出版会)、伊藤・寺中「裁判員と死刑制度」(新泉社)他。
【特記事項】
【開講期・曜日時限・ペア・教員名】
開講期・曜日時限が下記の表で示されていますが、履修できる曜日時限は学年・学科等により異なる場合があります。自分の「履修登録」画面に表示される曜日時限のみ履修登録することができます。

開講期 曜日時限 ペア 教員名
2期 水3 寺中 誠